ブレスト&決定力向上塾

【実践ワーク】アイデアを絞り込み、具体的なアクションへ繋げるチームワークショップ

Tags: アイデア評価, 意思決定, ワークショップ, チームビルディング, 問題解決

はじめに

チームで新しいアイデアを生み出すブレインストーミングや発想ワークショップは非常に有効ですが、そこから生まれた多種多様なアイデアをどのように扱い、具体的な行動に繋げるかという課題に直面することも少なくありません。アイデアを「出す」だけでなく、「選び」「実行可能な形にする」プロセスは、チームの生産性と意思決定の質を左右します。

本記事では、チームでアイデアを効率的に評価・選定し、次のステップである具体的なアクションプラン策定へスムーズに移行するための実践的なワークショップ手法をご紹介します。このワークを通じて、チーム全体の合意形成を図りながら、最も価値の高いアイデアを実行に移す力を高めることを目指します。

アイデア評価・選定・アクション化ワークショップの目的

このワークショップは、以下の目的を達成することを目指します。

ワークショップの全体構成

本ワークショップは、概ね以下のステップで進行します。各ステップはチームの状況や時間に応じて調整してください。

  1. ウォームアップと目的の再確認(10分〜15分)
  2. ステップ1:評価基準の設定(20分〜30分)
  3. ステップ2:アイデアの評価と共有(30分〜60分)
  4. ステップ3:アイデアの絞り込み(20分〜40分)
  5. ステップ4:具体的なアクションへの落とし込み(40分〜60分)
  6. まとめと次のステップ確認(10分)

合計で約2時間半から3時間半を想定しますが、アイデアの数やチームの議論状況によって変動します。

各ステップの詳細

ステップ1:評価基準の設定

アイデアを主観ではなく、客観的に評価するためには、共通の評価基準が必要です。この基準は、チームやプロジェクトの目的、解決したい課題、制約条件などを踏まえて設定します。

進行手順:

  1. 目的の再確認: このワークショップで評価するアイデアが、どのような目的のために出されたものか、解決したい課題は何だったかをチーム全員で再確認します。
  2. 基準のブレインストーミング:
    • 「どのようなアイデアであれば、私たちの目的に最も貢献できるか?」
    • 「アイデアを実行する上で、考慮すべき重要な要素は何か?(例:コスト、時間、技術的な実現可能性、ユーザーへの影響、リスク、新規性)」
    • これらの問いを起点に、アイデアを評価するための基準候補をチーム全員で自由に発言・書き出します。付箋やオンラインホワイトボードツールを使用すると便利です。
  3. 基準の選定と定義:
    • 出された基準候補の中から、特に重要と思われるものを3〜5個程度に絞り込みます。基準が多すぎると評価が煩雑になります。
    • 選定した各基準について、「それは具体的に何を意味するのか?」をチームで共通認識が持てるように明確に定義します。例えば、「実現可能性」であれば、「必要な技術スキルがチーム内にあるか」「外部リソースは必要か」といった要素を具体化します。

効果を出すためのポイント:

ステップ2:アイデアの評価と共有

設定した基準に基づいて、それぞれのアイデアを評価します。評価方法はいくつか考えられます。

進行手順:

  1. アイデアの提示: 評価対象となるすべてのアイデアを一覧できる形(ホワイトボード、共有ドキュメント、オンラインツールなど)で提示します。必要に応じて、アイデアの発案者から簡単な説明を加えます。
  2. 個別評価(推奨):
    • 各参加者は、設定した基準に照らし合わせ、それぞれのアイデアを個別に評価します。
    • 評価方法の例:
      • 点数付け: 各基準に対し、アイデアごとに1〜5点などで評価し、合計点を算出する。
      • マトリクス評価: 縦軸と横軸に主要な評価基準(例:「インパクト」と「実現可能性」)を設定し、アイデアをプロットする。
      • 基準ごとのコメント: 各アイデアについて、各基準に対する簡単な評価コメントを記入する。
    • この段階では、他の参加者の評価に引きずられないよう、個々で行うことが望ましいです。
  3. 評価の共有と議論:
    • 参加者それぞれの評価結果を共有します。
    • 特に評価にばらつきが大きいアイデアや、点数が高かった・低かった理由について、チームで議論します。なぜそのように評価したのか、具体的な根拠や懸念点を共有することで、アイデアに対する理解を深めます。

ツール例:

ステップ3:アイデアの絞り込み

評価結果と議論を踏まえ、実行に移すアイデアを絞り込みます。必ずしも評価点が高いアイデアだけを選ぶ必要はありません。議論の中で見えてきた新たな視点も考慮に入れます。

進行手順:

  1. 評価結果の参照: ステップ2での評価結果(点数、マトリクス上の位置、議論内容)を改めて確認します。
  2. 絞り込み方法の選択と実施:
    • ドット投票: 各参加者に持ち点(例:3〜5点)を与え、最も実行したい、価値があると感じるアイデアに投票してもらう。視覚的に人気度を確認できます。
    • 議論と合意形成: 評価結果やドット投票の結果を参考に、チーム全体で議論し、どのアイデアを優先的に進めるか、なぜそれを選定するのかについて合意形成を図ります。特に重要な判断には、意思決定ワークショップの手法(例:コンセンサス法、選好投票など)を組み合わせることも有効です。
    • 組み合わせ: いくつかのアイデアを組み合わせることで、より強力なソリューションにならないかを検討します。
  3. 選定アイデアの確定: チームとして、次のステップに進めるアイデアをいくつか(例:1〜3個)に絞り込み、確定します。この際、「なぜこのアイデアを選んだのか」を明確にしておくことが、後の実行段階での迷いを減らします。

効果を出すためのポイント:

ステップ4:具体的なアクションへの落とし込み

選定したアイデアを実行可能なタスクやプロジェクトとして具体化します。アイデアを実現するための最初のステップを明確にします。

進行手順:

  1. アイデアの具体化: 選定したアイデアが抽象的な場合は、もう少し具体的な形にします。「どのようなユーザー課題を、どのように解決するのか」「完成形はどのようなものか」などを改めて議論します。
  2. 最初のステップの特定: アイデアを実行に移すための最初の具体的なアクション(例:ユーザーヒアリングの実施、技術的な調査、プロトタイプの作成、詳細設計の開始)を特定します。
  3. タスクの分解: 特定した最初のアクションを、担当者と期日を明確にしたタスクに分解します。タスク管理ツール(Jira, Trelloなど)やスプレッドシートを使用します。
  4. 担当者と期日の設定: 各タスクに対し、担当者と完了期日を設定します。実行可能な、現実的なタスクと期日設定を心がけてください。
  5. 必要なリソースの検討: タスク実行に必要なリソース(人、時間、ツール、予算など)について簡単に検討します。
  6. 次のチェックポイント設定: アクションの進捗を確認するための、次回のミーティングやレビューのタイミングを設定します。

効果を出すためのポイント:

まとめと次のステップ

本ワークショップを通じて、チームはアイデアの海の中から価値あるものを選び出し、それを具体的な行動に繋げる道筋を明確にしました。

このワークショップは一度行えば終わりではありません。定期的にアイデアを出し、評価し、実行に移すサイクルを回すことが、チームの継続的なイノベーションと問題解決能力の向上に繋がります。

今回策定したアクションプランに基づき、まずは最初のステップを実行に移してください。そして、進捗状況をチームで共有し、必要に応じて計画を柔軟に見直しながら、アイデアの実現に向けて前進していきましょう。

もし、このプロセスの中でチーム内の意見が大きく分かれる場面があったり、特定のメンバーが発言しにくい雰囲気を感じたりした場合は、チームの心理的安全性やコミュニケーションの課題に別途取り組むことも検討してください。円滑なアイデア評価と意思決定は、チームの高い心理的安全性の上で成り立ちます。

実践を通して、チームのアイデア実行力を高めていきましょう。