【実践ワーク】オンラインでのチーム会議を活性化させるワークショップ
はじめに
多くのチームがオンライン環境での共同作業に移行する中で、会議の効率や効果について課題を感じているリーダーやメンバーの方も多いかと存じます。対面とは異なるオンラインならではの特性により、集中力の維持が難しくなったり、意見交換が活発に行われにくくなったりするケースが見受けられます。
本記事では、このようなオンライン会議の課題を克服し、チームの生産性とエンゲージメントを高めるための実践的なワークショップ手法をご紹介します。会議そのものを改善対象と捉え、チーム全体で効果的なオンライン会議のあり方を学び、実践していくプロセスをワークショップ形式で体験します。
オンライン会議活性化ワークショップの目的と効果
このワークショップの主な目的は以下の通りです。
- オンライン会議における現在の課題をチームで共有し、認識を合わせる。
- 効果的なオンライン会議のための基本的な原則や手法を学ぶ。
- 具体的な改善策をチームで検討し、次の会議から実践できる行動計画を立てる。
このワークショップを実施することで、チームには以下のような効果が期待できます。
- 会議中の参加者の集中力とエンゲージメントが向上する。
- 発言しやすい雰囲気が醸成され、多様な意見が出やすくなる。
- 会議の目的が明確になり、アジェンダに沿った効率的な進行が可能になる。
- 議事録の作成や情報共有がスムーズになり、認識のズレが減少する。
- チームとしてオンラインでのコミュニケーション能力が向上する。
ワークショップの進め方
このワークショップは、チームの現状に合わせてカスタマイズ可能ですが、ここでは基本的な手順をご紹介します。目安時間は1.5時間から2時間程度です。オンラインでの実施を想定し、オンラインホワイトボードツール(Miro、Muralなど)やビデオ会議ツール(Zoom、Teamsなど)の活用を前提とします。
Step 1: チェックイン(10分)
- 目的: 参加者の現在の状態を共有し、ワークショップへの参加意欲を高める。
- 手順:
- ファシリテーターがワークショップの目的と流れを簡単に説明します。
- 一人ずつ、簡単な問いに答えてもらいます。(例: 「今の気分を天気で例えると?」「最近のオンライン会議で良かったこと・悪かったことは?」など)
- オンラインホワイトボード上に各自の名前カードを置き、感情を表す絵文字や短い言葉を添える方法も有効です。
- ポイント: 短時間で全員が発言できる機会を設けることが重要です。心理的安全性を高める第一歩となります。
Step 2: オンライン会議の現状課題共有(20分)
- 目的: チームの現状のオンライン会議における課題を洗い出し、共有する。
- 手順:
- オンラインホワイトボード上に「課題」と書かれたエリアを作成します。
- 各自、付箋形式で「最近のオンライン会議で困っていること」「改善したいと思うこと」を書き出します。(例: 「発言のタイミングが難しい」「画面共有中に相手の顔が見えない」「会議の目的が不明確」「休憩がなくて疲れる」など)
- 書き出し終わったら、それぞれの付箋を簡単に説明し、全体で共有します。
- 必要に応じて、似た課題をグループ化します。
- ポイント: 具体的な会議名や参加者を特定するのではなく、普遍的な課題に焦点を当てるように促します。否定的な意見も肯定的に受け止める雰囲気を作ります。
Step 3: 効果的なオンライン会議の要素を考える(25分)
- 目的: 理想的なオンライン会議に必要な要素や手法について、チームで考える。
- 手順:
- オンラインホワイトボード上に「良い会議の要素」と書かれたエリアを作成します。
- 各自、「こんな会議だったら参加したい」「こんな工夫があったら良いと思う」といった、効果的なオンライン会議に必要な要素や具体的なアイデアを付箋で書き出します。(例: 「アジェンダが明確」「タイムキーピングがしっかりしている」「チャットを活用する」「こまめに休憩を入れる」「会議時間を短くする」「発言機会を均等にする工夫」など)
- 書き出し終わったら、それぞれの付箋を簡単に説明し、全体で共有します。
- 出てきたアイデアを、例えば「事前準備」「会議中」「終了後」といったカテゴリに分けて整理します。
- ポイント: Step 2で出た課題に対する解決策となるようなアイデアを意識的に引き出します。他チームや過去の経験でうまくいった事例を共有するのも良いでしょう。
Step 4: 改善アクションの決定(30分)
- 目的: Step 3で出たアイデアの中から、チームとして取り組むべき具体的な改善アクションを決定する。
- 手順:
- Step 3で整理した「良い会議の要素」やアイデアの中から、チームとして次の会議から取り入れたい、あるいは試してみたいと思う項目を数個選びます。(投票機能などを使うとスムーズです)
- 選ばれた項目に対し、「誰が」「何を」「いつまでに」行うかを具体的に決め、アクションプランを作成します。(例: 「〇〇さんが、次回の定例会議でチャットでの質問受付を試す」「△△さんが、議事録のフォーマットをシンプルにする案を作成する」など)
- アクションプランをオンラインホワイトボードや共有ドキュメントに記録し、チーム全体で確認します。
- ポイント: 最初から多くの項目に取り組もうとせず、チームにとって最も効果が高そうな、かつ実現可能な少数のアクションに絞り込むことが成功の鍵です。アクションの担当者と期限を明確に設定します。
Step 5: チェックアウトと次のステップ(15分)
- 目的: ワークショップ全体を振り返り、今後の継続的な改善につなげる意識を高める。
- 手順:
- ワークショップ全体を振り返り、参加者一人ずつ簡単な感想や気づきを共有します。(例: 「今日のワークショップに参加して学んだことは?」「これからオンライン会議で実践したいことは?」など)
- 決定したアクションプランを再確認し、次回の会議でその効果をどう確認するか(振り返りのタイミングなど)を簡単に決めます。
- ファシリテーターがワークショップのまとめと、チームへの感謝を伝えます。
- ポイント: ポジティブな雰囲気で終了し、今後の実践へのモチベーションを高めます。継続的に会議の改善に取り組むことの重要性を伝えます。
ワークショップを成功させるためのポイント
- 明確な目的設定: なぜこのワークショップを行うのか、その目的を参加者全員が理解していることが重要です。
- ツールの習熟: 使用するオンラインツール(ビデオ会議、ホワイトボードなど)の基本的な操作にチームメンバー全員が慣れていると、ワークショップがスムーズに進行します。
- ファシリテーション: タイムキーピング、発言機会の調整、意見の整理、参加者のエンゲージメント維持など、オンライン環境でのファシリテーションスキルが重要になります。必要に応じて、ファシリテーター役を交代するのも良いでしょう。
- 事前の準備: アジェンダ、使用ツールの準備、必要な資料の共有など、ファシリテーターは入念な準備を行う必要があります。
- 継続的な実施: 一度のワークショップで全てが解決するわけではありません。定期的に会議の振り返りを行い、改善アクションを継続的に見直すことが、チームのオンライン会議の質を着実に向上させます。
まとめ
オンライン会議は、今後も多くのチームにとって重要なコミュニケーション手段であり続けるでしょう。単にツールを使うだけでなく、会議の設計や進行方法、そして参加者の関わり方といった側面から改善に取り組むことで、その効果を大きく高めることができます。
今回ご紹介したワークショップは、チーム全体でオンライン会議の課題に向き合い、具体的な解決策を生み出すための有効なアプローチです。ぜひ皆様のチームでもこのワークショップを実践し、より生産的で活気のあるオンライン会議を実現してください。チームでの試行錯誤を通して、最適なオンラインコミュニケーションの形を見つけていくことが重要です。