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【実践ワーク】チームで問題の真の原因を探る特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム)ワークショップ

Tags: 問題解決, 根本原因分析, 特性要因図, チームワークショップ, ブレインストーミング

チームで問題に直面した際、その原因が複雑に絡み合っていると感じることは少なくありません。表面的な現象だけを見て対策を講じても、根本的な解決には至らず、同じ問題が再発するケースもあります。このような状況を打開し、チーム全体で問題の真の原因を深く理解し、共通認識を持って解決に取り組むためには、体系的な分析手法が有効です。

本記事では、問題の原因と結果の関係を視覚的に整理する効果的な手法である「特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム)」を用いたチームワークショップの進め方について解説します。このワークショップを通じて、チームは問題の本質を見極め、より効果的な対策を講じるための基盤を築くことができます。

特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム)とは

特性要因図は、ある結果(特性)に対して、考えられるすべての原因(要因)を体系的に整理し、その関連性を示す図です。その形状が魚の骨に似ていることから、「フィッシュボーンダイアグラム」とも呼ばれます。石川馨氏によって品質管理のために考案された手法ですが、現在では様々な分野で問題分析や原因究明に広く活用されています。

特性要因図の構成要素:

特性要因図を作成することで、原因の洗い出し漏れを防ぎ、原因間の相互関係を理解しやすくなります。また、図として視覚化されるため、チームメンバー間での情報共有や議論を促進する効果も期待できます。

特性要因図ワークショップの目的と効果

このワークショップの主な目的は以下の通りです。

このワークショップを実施することで、チームは以下の効果を得ることができます。

特性要因図ワークショップの準備

ワークショップを円滑に進めるためには、事前の準備が重要です。

  1. 目的の明確化: 何のためにこのワークショップを実施するのか(例: 特定のバグの発生率が高い原因を特定する、開発リードタイムが長期化している原因を分析するなど)、具体的な目的を明確にします。
  2. 分析対象となる「問題(特性)」の設定: チームで合意された、具体的で測定可能な問題を設定します。抽象的な表現ではなく、「〇〇のバグ発生率が先月比で20%増加した」「機能Xの開発リードタイムが計画より1週間遅延している」のように、具体的な事象として定義します。
  3. 参加者の選定: 問題に関係する多様な視点を持つチームメンバーや関係者を選定します。開発者、テスター、プロダクトマネージャー、運用担当者など、幅広い知識と経験を持つメンバーが集まることで、多角的な原因の洗い出しが可能になります。
  4. 場所とツールの準備:
    • オフラインの場合: 十分な広さの会議室、ホワイトボードまたは模造紙、付箋、マーカー。
    • オンラインの場合: 共同編集が可能なホワイトボードツール(Miro, Mural, FigJamなど)。これらのツールは、特性要因図テンプレートが用意されている場合が多く、オンラインでの同時作業に適しています。
  5. 所要時間の設定: 問題の複雑さや参加人数によりますが、通常1時間半〜3時間程度を見積もります。
  6. 事前の情報共有: 分析対象となる問題に関するデータや背景情報を事前に参加者に共有しておくと、ワークショップ当日の理解が深まり、より質の高い議論が期待できます。

特性要因図ワークショップの手順

以下の手順でワークショップを進めます。ファシリテーターは、参加者全員が意見を出しやすい雰囲気を作り、議論を整理する役割を担います。

ステップ1:問題(特性)の定義と図の準備(10分)

ステップ2:大骨(主な原因カテゴリ)の洗い出し(15分)

ステップ3:中骨・小骨(詳細な原因)の深掘り(60分)

ステップ4:図全体の整理と原因の関連付け(20分)

ステップ5:重要と思われる原因の特定と合意形成(15分)

ステップ6:まとめと次のステップ(10分)

効果を出すためのポイント

具体的なシナリオ例:開発チームのバグ発生率増加

あるソフトウェア開発チームで、最近リリースした機能に関するバグ発生率が顕著に増加しているという問題が発生したとします。この問題に対して特性要因図ワークショップを実施するシナリオを考えます。

中骨・小骨の洗い出し例(「プロセス」の大骨の場合):

このように、一つの大骨から具体的な原因をどんどん掘り下げていきます。他の大骨についても同様に原因を洗い出し、図全体を作成します。

まとめ

特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム)は、チームで問題の真の原因を体系的に探し出し、共通認識を形成するための強力なツールです。このワークショップを通じて、チームは表面的な事象にとらわれず、問題の本質に迫ることができます。

ワークショップで作成した特性要因図は、そこで終わりではなく、次のアクションに繋げるための重要なインプットとなります。特定された重要な原因に対して、具体的な対策を検討し、実行計画を立てることで、問題の根本的な解決に一歩踏み出すことができます。

チームで問題解決能力を高めるために、ぜひ特性要因図ワークショップを実践してみてください。原因に対する共通理解は、建設的な議論と効果的な対策立案の出発点となります。