【実践ワーク】チームで目標達成に向けた具体的な実行計画を策定するワークショップ
チームで目標達成に向けた具体的な実行計画を策定するワークショップ
チームで高い目標を設定することは、成長や成果を追求する上で非常に重要です。しかし、目標が設定されただけでは、チームが一体となって行動し、実際に目標を達成することは困難な場合が多いでしょう。目標は単なる羅針盤であり、そこに到達するためには、具体的な行動計画、つまり「実行計画」が不可欠となります。
目標と実行計画の間には、しばしば見過ごされがちなギャップが存在します。このギャップを埋め、チーム全体が同じ方向を向き、何を、いつまでに、誰が担当するのかを明確にすることが、目標達成の鍵を握ります。
本記事では、チームで設定した目標(OKR、KPI、プロジェクト目標など)を、実行可能な具体的なステップに落とし込むためのワークショップ手法をご紹介します。このワークショップを通じて、チームの実行力を高め、目標達成の確度を向上させることを目指します。
なぜ実行計画策定ワークショップが必要か
目標設定後、実行計画の策定をチームで行うことには、以下のような多くのメリットがあります。
- 目標の共通理解とコミットメントの向上: 目標達成のために何が必要かを議論することで、チームメンバー間の目標に対する理解が深まり、主体的な関与(コミットメント)が生まれます。
- 具体的な行動の明確化: 抽象的な目標を具体的なタスクやステップに分解することで、「次は何をすれば良いのか」が明確になります。
- 役割と責任の明確化: 各タスクの担当者や期限を定めることで、責任の所在が明確になり、タスクの抜け漏れを防ぎます。
- 進捗管理の容易化: 具体的な計画があれば、進捗状況を定量的に把握しやすくなり、問題発生時の早期発見と対応が可能になります。
- チームの連携強化: 計画策定プロセスを通じて、チームメンバー間のコミュニケーションが促進され、相互の依存関係や協力の必要性が理解されます。
実行計画策定ワークショップの進め方
このワークショップは、通常90分〜120分程度の時間を確保して実施することをお勧めします。チームの規模や目標の複雑さによって時間を調整してください。対面でもオンラインでも実施可能ですが、オンラインの場合は共有ホワイトボードツール(Miro, Muralなど)の活用が有効です。
ステップ1: 目標の再確認と共通理解(15分)
まず、今回実行計画を策定する対象となる目標(KGI、KPI、OKRのOとKRなど)をチーム全員で再確認します。
- 目的: 目標に対するチームメンバー間の認識のズレをなくし、共通理解を深める。
- 手順:
- ファシリテーターが目標を提示し、その背景や意図を簡単に説明します。
- 各メンバーに、その目標について理解していること、疑問点、懸念点などを自由に発言してもらいます。
- 不明確な点や認識のズレがあれば、議論を通じて解消します。必要に応じて、目標設定の背景にある上位目標や、チームが置かれている状況などを再確認します。
- 最終的に、チーム全員が目標の内容とその重要性を理解し、納得した状態を目指します。
ステップ2: 目標達成に必要な要素・マイルストーンのブレイクダウン(20分)
設定した目標を達成するために、どのような大きな要素や中間目標(マイルストーン)が必要になるかを洗い出します。これは、目標をより小さな、管理しやすい塊に分解する最初のステップです。
- 目的: 目標達成までの道のりを大まかに把握し、全体像を捉える。
- 手順:
- チーム全員で、目標達成に不可欠と思われる主要な活動分野、中間成果、または重要な通過点(マイルストーン)をブレインストーミングします。
- 出されたアイデアをホワイトボードや共有ツール上に書き出します。似たものがあればグルーピングしても良いでしょう。
- 洗い出された要素やマイルストーンが、目標達成のために十分かどうかをチームで議論します。抜け漏れがないか、重複がないかなどを確認します。
ステップ3: 具体的なタスクへの分解(30分)
ステップ2で洗い出した要素やマイルストーンを、さらに具体的な実行可能なタスクのレベルまで分解します。誰が、いつ、何をするかが見えるレベルまで詳細化します。これはWBS(Work Breakdown Structure)の考え方に近いアプローチです。
- 目的: 目標達成に必要な具体的なアクションリストを作成する。
- 手順:
- ステップ2で決定した各要素やマイルストーンに対し、それを実現するために必要な具体的なタスクをリストアップします。
- タスクは、「〇〇を△△する」のように、完了基準が明確な形で記述します。タスクが大きすぎる場合は、さらに細分化します。
- すべての要素やマイルストーンについて、このタスク分解を行います。
- チーム全員でリストアップされたタスクを確認し、網羅性や粒度について議論します。タスクの依存関係についても簡単に議論を開始します。
ステップ4: 各タスクの詳細設定(担当者、期限、依存関係)(30分)
分解された各タスクに対して、実行に必要な情報を設定します。
- 目的: 各タスクの責任者、完了期日、および他のタスクとの関連性を明確にする。
- 手順:
- リストアップされた各タスクについて、チームメンバーで担当者を決めます。各自のスキルや負荷を考慮して、最適な担当者を割り振ります。この際、メンバーが自ら担当したいタスクを挙げる形式にすると、主体性が高まります。
- 各タスクの完了期日を設定します。マイルストーンの期日を考慮しつつ、現実的なスケジュールを立てます。タスク間の依存関係(〇〇が終わらないと△△は開始できないなど)も考慮に入れます。
- 必要に応じて、タスクの完了条件や使用するツール、考慮すべきリスクなども追記します。
- ホワイトボードやツール上で、担当者、期限、依存関係を可視化します(簡単なガントチャート風やタスクリスト形式など)。
ステップ5: 計画のレビューと合意形成(10分)
策定した実行計画案全体をチーム全員でレビューし、最終的な合意を形成します。
- 目的: 計画の実現可能性を確認し、チーム全員が計画に対して納得し、コミットできるようにする。
- 手順:
- 作成された実行計画全体をチームで確認します。
- 計画に無理がないか、リソースは足りるか、リスクは考慮されているかなどを議論します。
- 計画に対して懸念や疑問がある場合は率直に共有し、必要に応じて計画を修正します。
- チーム全員が計画に納得し、「この計画で目標達成を目指せる」と合意形成ができたら完了です。
ステップ6: 進捗管理と計画の見直し方法の確認(5分)
最後に、策定した計画をどのように実行し、進捗を管理していくかを確認します。計画は一度作って終わりではなく、状況に応じて柔軟に見直す必要があります。
- 目的: 計画を実行に移し、継続的に管理・改善するための体制を確認する。
- 手順:
- 計画の進捗をどのように共有・確認するか(例: デイリースタンドアップ、週次ミーティング)を決めます。
- 計画の遅延や変更が生じた場合に、どのように計画を見直すか(例: 定期的な計画見直し会、必要に応じた臨時ミーティング)を確認します。
- 計画はあくまで現時点での最善の予測であり、変化に応じて柔軟に対応することの重要性を再確認します。
ワークショップを成功させるためのポイント
- 明確な目標設定: ワークショップを開始する前に、対象となる目標が具体的で、測定可能で、達成可能で、関連性があり、期限がある(SMART)ものであることを確認してください。目標が曖昧だと、具体的な計画を立てることは困難です。
- ファシリテーション: ファシリテーターは、議論が脱線しないように誘導し、全員が意見を述べやすい雰囲気を作り、時間管理を徹底する必要があります。
- ツールの活用: 共有ホワイトボード、タスク管理ツール(Jira, Trello, Asanaなど)、スプレッドシートなどを効果的に活用することで、計画の可視化と共有が容易になります。
- 現実的な計画: 楽観的すぎず、悲観的すぎない、現実的な計画を立てることが重要です。必要に応じて、バッファやリスク対策も計画に盛り込みます。
- 全員参加: チームメンバー全員が計画策定プロセスに参加することで、主体性と責任感が育まれます。特定のメンバーに作業を任せきりにしないように注意が必要です。
まとめ
チームの目標達成は、単に高い目標を設定するだけでなく、それを具体的な実行計画に落とし込み、チーム一丸となって実行していくプロセスにかかっています。今回ご紹介したワークショップは、この「目標を具体的な行動へ変える」ための効果的なフレームワークを提供します。
このワークショップを定期的に実施することで、チームは常に目標達成に向けた最善の道筋を確認し、変化に迅速に対応できるようになります。ぜひあなたのチームでも試してみてください。計画を策定し、実行し、そして計画自体を改善していくサイクルを回すことが、チームの継続的な成長と成功に繋がるでしょう。