【実践ワーク】チームの成長を加速するフィードバックワークショップ
チームの生産性やメンバーの成長にとって、質の高いフィードバックの交換は不可欠です。しかし、「フィードバックが少ない」「どう伝えればいいか分からない」「言いにくい雰囲気がある」といった課題を感じているチームは少なくありません。
本記事では、チーム内で建設的かつ効果的なフィードバック文化を育むための実践的なワークショップをご紹介します。このワークショップを通じて、チームメンバーがお互いに安心してフィードバックを与え合い、受け止められるようになることを目指します。
なぜチームでのフィードバック交換が重要なのか
効果的なフィードバックは、以下のようなメリットをチームにもたらします。
- 個人の成長促進: 強みを認識し、改善点に気づくことで、メンバー一人ひとりのスキルやパフォーマンスが向上します。
- チームパフォーマンス向上: 課題や非効率なプロセスを早期に発見し、改善に繋げることができます。
- 信頼関係の構築: 建設的なフィードバックは、心理的安全性を高め、メンバー間の信頼を深めます。率直な意見交換が可能になり、問題が隠蔽されにくくなります。
- 変化への適応力向上: 状況の変化に応じてチームのやり方や振る舞いを調整する能力が高まります。
逆に、フィードバックが不足したり、適切に行われなかったりすると、問題が放置されたり、メンバーが孤立したりするリスクが高まります。
ワークショップの目的と概要
目的:
- 効果的なフィードバックの重要性と基本原則を理解する。
- 建設的なフィードバックの伝え方・受け取り方を練習する。
- チーム内で安心してフィードバックを交換できる文化の礎を築く。
対象者: チームリーダー、チームメンバー全員
所要時間: 90分~120分程度
必要なツール・準備:
- 会議室またはオンライン会議ツール(Zoom, Teamsなど)
- ホワイトボードまたはオンラインホワイトボードツール(Miro, Muralなど)
- 付箋(物理またはデジタル)、ペン
- フィードバックの基本原則をまとめた資料またはスライド
ワークショップの手順
ステップ1: 導入とアイスブレイク(15分)
- 目的共有: 本ワークショップの目的(チームの成長促進、心理的安全性向上、建設的なコミュニケーション)を改めて伝えます。なぜ今このワークショップを行うのか、その背景にあるチームの現状課題に触れるのも有効です。
- アイスブレイク: 参加者がリラックスし、話しやすい雰囲気を作る簡単なアクティビティを行います。(例:「最近受けたフィードバックで嬉しかったこと」「チームの良いところ」などを一人ずつ話す)
- グランドルール設定: 「傾聴する」「相手を尊重する」「プライベートな話題には触れない」など、フィードバック交換における基本的なルールやこの場の安全性を保つための約束事をチームで確認または設定します。匿名でのフィードバックを扱う場合はそのルールも明確にします。
ステップ2: 効果的なフィードバックの基本原則を学ぶ(20分)
- 効果的なフィードバックとそうでないフィードバックの違いについて解説します。
- 以下のフィードバック基本原則を紹介します。
- 具体的であること: 抽象的な評価ではなく、特定の行動や事象に基づいて伝える。
- 客観的であること: 可能であればデータや観察に基づき、主観的な感情や憶測を排除する。
- 行動に焦点を当てること: 人格ではなく、変えることのできる行動や結果について話す。
- タイムリーであること: 事象から時間が経ちすぎないうちに伝える。
- 建設的であること: 改善に向けた提案やポジティブな側面も含める。
- 相手への配慮: 相手の状況や感情に配慮し、伝え方を工夫する。
- SBIフレームワークの紹介:
- 効果的なフィードバックの構造として、SBIフレームワーク(Situation-Behavior-Impact)を紹介します。
- Situation (状況): いつ、どこで、どのような状況だったか。
- Behavior (行動): その状況で相手がどのような行動をとったか。
- Impact (影響): その行動が自分やチームにどのような影響を与えたか。
- 例:「先週の定例ミーティング(S)で、あなたが〇〇というアイデアを提案(B)してくれたおかげで、議論が活性化し、新しい視点が得られました(I)。ありがとうございました。」
- 例:「昨日の朝会(S)で、タスクの進捗報告が曖昧だった(B)ため、他のメンバーが自分のタスクとの連携について判断に迷う(I)状況が発生しました。」
- 効果的なフィードバックの構造として、SBIフレームワーク(Situation-Behavior-Impact)を紹介します。
ステップ3: フィードバック練習ワーク(30分)
- ペアワークまたは小グループワーク: 2〜3人のグループになり、フィードバックの練習を行います。
- シナリオ練習:
- 簡単な練習用シナリオ(例:議事録の書き方、タスク完了報告の仕方、ミーティングでの発言内容など)を提示し、それに対するフィードバックをSBIフレームワークなどを使って伝える練習をします。
- または、最近の業務で「ポジティブなフィードバックを送りたい行動」「改善してほしい行動」を各自が思い浮かべ、匿名性を保ちつつ(付箋に書いて交換するなど)、SBIフレームワークを使って伝える練習をします。
- ロールプレイング: 送る側と受け取る側に分かれてロールプレイングを行います。受け取る側は、フィードバックをどのように受け止めたか、どう感じたかを伝えます。
ステップ4: チーム全体でのフィードバック交換アクティビティ(30分)
- 安全な形式でのフィードバック交換: チーム全体でフィードバックを交換するアクティビティを行います。匿名性や特定のテーマに絞ることで、心理的なハードルを下げます。
- 例:KPT(Keep, Problem, Try)やふりかえり(Retrospective)の手法を活用する:
- Keep: 今後も続けたい良い点、うまくいっていること。
- Problem: 課題だと感じること、改善したい点。
- Try: 次に試してみたいこと、改善策。
- オンラインホワイトボードツールに「Keep」「Problem」「Try」などのカラムを用意し、各自が付箋で意見を書き込みます。
- 書き出し後、類似する意見をまとめ、それぞれについて簡単に議論し、特に「Problem」や「Try」について、チームとして何ができるかを話し合います。
- 特定のテーマに絞る: 例:「最近の〇〇プロジェクトにおけるチームのコミュニケーションについて」「リモートワークでの情報共有について」など、具体的なテーマについてフィードバックを求めます。
ステップ5: 振り返りと次のステップ(15分)
- ワークショップの振り返り: 参加者からワークショップ全体の感想や気づきを共有してもらいます。(例:「フィードバックの伝え方で学んだこと」「今後のフィードバックに活かしたいこと」)
- 今後のアクション:
- チームとして、今後どのようにフィードバックを習慣化していくか話し合います。(例:週次のミーティングでフィードバックタイムを設ける、1on1で定期的にフィードバックを行うなど)
- ワークショップで出た「Problem」や「Try」の中から、優先度の高いものを今後の改善アクションとして決定します。
- リーダーからのメッセージ: リーダーから、フィードバック文化醸成へのコミットメントと、メンバーへの感謝を伝えます。
効果を出すためのポイント
- リーダー自身が模範を示す: リーダーが積極的にフィードバックを与え、また謙虚にフィードバックを受け止める姿勢を見せることが最も重要です。
- 心理的安全性の確保: フィードバックを求めること、受け止めること、伝えること全てにおいて、非難や否定を恐れずに行える環境を維持することが不可欠です。ワークショップ中の発言内容を評価しないこと、失敗を許容する雰囲気作りを心がけてください。
- 定期的な実施: 一度きりのワークショップではなく、定期的にフィードバックの機会を設ける、またはこのようなワークショップを繰り返すことで、スキルが定着し文化として根付きます。
- ポジティブフィードバックの重要性: 改善点だけでなく、強みや貢献に対するポジティブなフィードバックも積極的に交換することを奨励してください。これは心理的安全性を高める上で非常に効果的です。
- ツール活用: オンラインホワイトボードや専用のフィードバックツールを活用することで、匿名での意見交換や情報の整理が容易になります。
まとめ
チームでの効果的なフィードバック交換は、単なるスキルではなく、チームの成長と信頼関係を支える土台です。今回ご紹介したワークショップは、その土台を築くための一歩となるでしょう。
ぜひ、このワークショップをあなたのチームで実施し、メンバーがお互いに学び合い、高め合える、より良いチーム文化を育んでください。継続的な実践を通じて、チーム全体のパフォーマンス向上に繋がっていくことを願っています。