【実践ワーク】チームの課題を構造化・共有する課題マップ作成ガイド
チームの課題を明確にする重要性
チームで目標達成を目指す上で、様々な課題に直面することは避けられません。しかし、これらの課題が曖昧であったり、メンバー間で認識が異なっていたりすると、効果的な対策を講じることが難しくなります。問題解決の第一歩は、課題を正確に特定し、その本質を理解することです。
本記事では、チームの課題を構造化し、メンバー間で共通認識を持つための実践的なワークである「課題マップ作成」についてご紹介します。このワークを通じて、チームは課題間の因果関係を整理し、本当に取り組むべき根本原因を特定する力を高めることができます。
課題マップとは
課題マップ(またはイシューマップ、イシューツリー)とは、チームが抱える個別の課題を洗い出し、それらの間の原因と結果の関係を矢印で結んで可視化した図のことです。複雑に絡み合った課題を整理し、全体像を把握するのに役立ちます。
例えば、「製品のバグが多い」という課題は、単独で存在するのではなく、「テスト時間が不足している」「仕様変更が頻繁すぎる」「開発メンバーのスキルにばらつきがある」といった他の課題と関連している可能性があります。課題マップを作成することで、これらの関連性を一目で理解し、表面的な課題ではなく、その背後にある根本原因に焦点を当てやすくなります。
課題マップ作成ワークの目的と効果
このワークの主な目的は以下の通りです。
- 課題の明確化と共有: チーム全員で現状の課題を共有し、認識のずれをなくします。
- 構造的な理解: 個別の課題がどのように関連し合っているかを理解します。
- 根本原因の特定: 表面的な課題の背後にある真の原因を見つけ出します。
- 議論の深化: 課題の関連性を考える過程で、活発な議論が促進されます。
- 優先順位付けの土台: どの課題から取り組むべきかを判断するための材料を得られます。
適切に実施することで、チームの課題解決に向けた最初の一歩を、より効果的かつ効率的に踏み出すことができます。
課題マップ作成ワークの手順
ここでは、チームで課題マップを作成するための具体的なステップを解説します。対面での実施を想定していますが、オンラインツールを活用すればリモートチームでも同様に実施可能です。
準備するもの:
- 付箋またはポストイット (複数の色があると便利)
- 油性ペン
- 模造紙またはホワイトボード (オンラインの場合はMiro, Mural, FigJamなどの共同編集ツール)
- マスキングテープやマグネット (物理的な場合)
- 所要時間: 60分~120分程度(チームの規模や課題の複雑さによる)
ステップ 1: 個々で課題を洗い出す(10-15分)
まず、チームメンバーそれぞれが、現在のチームやプロジェクトに関して「課題だと感じていること」を個別に付箋に書き出します。
- ポイント:
- 1枚の付箋には1つの課題を書きます。
- 具体的な表現を心がけ、「〇〇が不明確」「△△するのに時間がかかりすぎる」のように書きます。抽象的な「なんとなく良くない」ではなく、観測可能な事実に基づく課題を意識します。
- 他人を非難するような書き方ではなく、状況や事象に焦点を当てます。
- この時点では、大小問わず、思いつく限り多くの課題を書き出します。他のメンバーの目を気にせず、自由に発想することが重要です。
- 一人あたり5~10個程度の課題を目標にすると良いでしょう。
ステップ 2: 課題を共有し、グルーピングする(15-20分)
メンバーが書き出した付箋を、模造紙やホワイトボードに貼り出します。その後、似ている内容や関連性の高い課題をまとめてグルーピングします。
- ポイント:
- 全員で付箋を読み上げながら貼り出していくと、共通認識が生まれやすいです。
- 似ている課題は物理的に近づけたり、同じ色の付箋を使ったりします。
- 話し合いながら、「これはこういうことだね」「これはあの課題と関係がありそうだ」といった会話をすることで、より深い理解につながります。
- グループには仮の名前をつけておくと、後のステップで扱いやすくなります。
ステップ 3: 課題間の因果関係線を引く(20-30分)
貼り出された個別の課題やグルーピングされた課題の間で、原因と結果の関係性を見つけ、矢印で結んでいきます。「〇〇が原因で、△△が起きる」という関係であれば、「〇〇」から「△△」へ矢印を引きます。
- ポイント:
- 「AだからBが起こる」というように、因果関係が成り立つかをメンバー全員で確認します。
- 迷う場合は、一度仮の矢印を引いてみて、全員で議論します。
- 矢印が複雑になりすぎないよう、重要な関係性に絞ることも検討します。
- 同じ課題に複数の矢印が流れ込んだり、複数の矢印が出て行ったりするのは自然なことです。
- このステップが最も時間がかかり、議論が白熱しやすい部分です。ファシリテーターが対話を促進し、全員の意見を聞きながら進めることが重要です。
ステップ 4: マップをレビューし、重要な課題を特定する(10-15分)
完成した課題マップを全員で俯瞰します。マップ全体を見て、特に矢印が多く集まっている課題や、他の多くの課題の原因となっているような課題(マップの根元に近い課題)に注目します。
- ポイント:
- 「この課題を解決すれば、他のどの課題に影響がありそうか?」という視点でマップを見ます。
- チームにとって最も影響が大きい、あるいは最も根本的な原因と思われる課題を数個ピックアップします。これが、次のステップ(解決策の検討)で優先的に取り組むべき課題候補となります。
- 必要であれば、特定した重要な課題に印をつけたり、別の場所に移したりします。
ステップ 5: 次のステップへつなぐ(5分)
特定した重要な課題に対して、今後どのように取り組んでいくかを簡単に確認します。「これらの課題について、来週のミーティングで具体的な解決策をブレインストーミングしよう」「担当者を決めて情報収集を進めよう」など、具体的なアクションを決めます。
ワークを成功させるためのポイント
- ファシリテーターの役割: 中立的な立場でワークの進行を管理し、全員が発言しやすい雰囲気を作ることが重要です。特定の意見に偏らず、多様な視点が出るように促します。
- 心理的安全性の確保: どんな課題でも安心して共有できる環境が必要です。「こんなことを言っても大丈夫かな」という懸念があると、本質的な課題が出てこない可能性があります。発言内容を否定せず、傾聴する姿勢を全員で共有します。
- 時間管理: 各ステップに目安時間を設定し、時間通りに進むよう意識します。議論が白熱しすぎた場合は、一度区切って次のステップに進む判断も必要です。
- 全員参加を促す: 一部のメンバーだけが発言するのではなく、全員が課題を共有し、関係性を考えるプロセスに参加することが、共通認識形成のために不可欠です。
- 完璧を目指しすぎない: 一度のワークで完璧な課題マップができるとは限りません。まずはざっくりと全体像を捉え、必要に応じて後から修正したり、別の機会に深掘りしたりするという意識で臨むと良いでしょう。
まとめ
課題マップ作成ワークは、チームが直面する複雑な課題を整理し、根本原因に迫るための有効な手法です。個々の課題を可視化し、それらの因果関係を構造的に理解することで、チーム全体として課題に対する共通認識を持つことが可能になります。
このワークを通じて特定された重要な課題は、その後の解決策検討や具体的なアクションプラン策定の強力な土台となります。ぜひチームでこのワークを実践し、効果的な問題解決への一歩を踏み出してください。チームのブレスト力と決定力の向上に繋がることを願っております。