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【実践ワーク】チームで実践する根本原因分析ワークショップ

Tags: 根本原因分析, チーム問題解決, ワークショップ, ファシリテーション

チームで活動していると、様々な問題に直面します。例えば、開発プロセスにおけるバグの多発、タスクの見積もり精度が低い、チーム内のコミュニケーション不足による認識の齟齬などです。これらの問題に対して、表面的な対処療法ではなく、その根本にある原因を取り除くことが、再発防止とチームの持続的な成長には不可欠です。

本記事では、チームで協力して問題の根本原因を探り当てるための「根本原因分析ワークショップ」の具体的な進め方について解説します。このワークショップは、単に問題の原因を特定するだけでなく、チーム全体の学習と改善文化の醸成に繋がる強力な手法です。

根本原因分析(Root Cause Analysis: RCA)とは

根本原因分析(RCA)とは、発生した問題やインシデントの最も根本にある原因を特定するための体系的な手法です。表面的な事象や直接的な原因だけでなく、「なぜそれが起きたのか」を繰り返し深掘りすることで、問題の真因にたどり着くことを目指します。

例えば、「本番環境で障害が発生した」という問題に対して、 * 直接的な原因: 「特定の機能にバグがあった」 * 根本原因の一例: 「テストプロセスに不備があり、その種のバグを検出できなかった」「開発者が仕様を誤解していた背景に、仕様書が曖昧だったことと、仕様確認のプロセスがなかったことがある」

このように、真の根本原因に対処することで、類似の問題の再発を防ぐことが可能になります。

なぜチームで根本原因分析を行うべきか

根本原因分析を個人で行うのではなく、チームで行うことには大きなメリットがあります。

根本原因分析ワークショップの進め方

ここでは、チームで根本原因分析を行うためのワークショップ形式の基本的な流れと、いくつかの具体的な手法をご紹介します。

準備:

ワークショップのステップ:

ステップ1: 問題の明確化と範囲設定 (約15-30分)

ワークショップの最初に、今回の分析対象となる問題について、チーム全員で共通認識を持ちます。

このステップでは、付箋やホワイトボードを使って、問題に関する既知の事実や観測された事象を書き出し、共有することから始めると良いでしょう。

ステップ2: データの収集と事実の整理 (ワークショップ外で事前に行うことも推奨)

問題発生時のログ、関係者からのヒアリング情報、関連ドキュメントなど、問題に関する客観的なデータを可能な限り収集し、整理します。この作業はワークショップの前に担当者を決めて行っておくと、ワークショップ当日の時間を有効に使えます。ワークショップの冒頭で、収集・整理された事実情報をチーム全体で共有し、疑問点があれば解消します。主観や推測ではなく、事実に焦点を当てることが重要です。

ステップ3: 原因の分析 (約45-90分)

収集・整理された事実に基づき、「なぜ問題が発生したのか?」という問いを繰り返し、考えられる原因を深掘りしていきます。ここではいくつかの代表的な手法があります。

手法1: 5 Whys (5つのなぜ)

最もシンプルで強力な手法の一つです。問題事象から出発し、「なぜそれが起きたのか?」という問いを最低5回繰り返します。回数はあくまで目安であり、真の根本原因にたどり着くまで「なぜ」を繰り返します。

5 Whysはシンプルゆえに、一本道の思考になりがちです。複数の「なぜ」の連鎖を並行して検討したり、他の手法と組み合わせたりすることも有効です。

手法2: Fishbone Diagram (特性要因図、石川ダイアグラム)

問題の結果(特性)に対して、考えられる原因(要因)を体系的に整理するための図です。魚の骨のような形になることからFishbone Diagramと呼ばれます。主に以下のカテゴリに分けて原因を洗い出すことが多いです。

チームでブレインストーミングを行いながら、問題の結果を魚の頭に書き、背骨から主要な要因カテゴリを大骨として伸ばし、それぞれのカテゴリに対して「なぜ」を繰り返し、具体的な原因を小骨として書き加えていきます。

Fishbone Diagramを使うことで、考えられる原因を網羅的に洗い出し、視覚的に整理することができます。

その他の手法

タイムライン分析(問題発生に至るまでの出来事を時系列で整理する)、パレート分析(原因を重要度でランク付けする)、散布図(2つの要因の関係を見る)なども、特定の状況においては有効な手法となり得ます。状況に応じて適切な手法を選択、または組み合わせて使用します。

ステップ4: 根本原因の特定と検証 (約15-30分)

ステップ3で洗い出された様々な原因の中から、真の根本原因を特定します。複数の原因が組み合わさっている場合もあります。

チームで議論し、合意形成を図りながら根本原因を絞り込みます。ここでファシリテーターは、特定の個人や部署を非難するような方向に議論が進まないよう注意し、あくまでシステムやプロセスの問題として捉えるように促します。

ステップ5: 解決策の検討と実行計画 (約30-60分)

特定された根本原因に対して、再発防止のための効果的な解決策を検討します。

ここでは、単に原因を取り除くだけでなく、今後同様の問題が発生しにくいような予防策や、プロセスの改善に繋がる解決策を検討することが重要です。

ワークショップを成功させるためのポイント

まとめ

チームで実践する根本原因分析ワークショップは、単に問題を解決するだけでなく、チームの学習能力を高め、継続的な改善を推進するための強力な手法です。表面的な事象に惑わされず、チーム全員で協力して真の原因を探求し、効果的な対策を実行することで、よりレジリエントで生産性の高いチームを築くことができます。

ぜひ、チームで抱える課題に対して、一度根本原因分析ワークショップを試してみてはいかがでしょうか。今回ご紹介した手順や手法が、皆様のチームの課題解決の一助となれば幸いです。