ブレスト&決定力向上塾

【実践ワーク】チームで真の課題を見つける問題定義ワークショップ

Tags: 問題解決, チームワークショップ, 問題定義, 課題発見, ファシリテーション

チームで取り組む問題定義の重要性

チームで何か問題が発生したとき、私たちはしばしば目の前の事象や症状に目を奪われがちです。「バグが多い」「会議で発言が少ない」「納期に間に合わない」といった具体的な出来事は、確かに問題の兆候です。しかし、これらの表面的な問題だけに対処しようとしても、根本的な解決には繋がらないことが少なくありません。

例えば、「バグが多い」という問題の背景には、「テストプロセスが不十分」「要求仕様が曖昧」「開発環境にばらつきがある」「チーム間の連携がうまくいっていない」など、さまざまな根本原因が隠れている可能性があります。表面的なバグ修正だけを繰り返しても、根本原因が放置されていれば、バグは再発し続けるでしょう。

真の問題解決の第一歩は、「何が本当の課題なのか」をチーム全体で深く理解し、明確に定義することです。このプロセスを丁寧に行うことで、チームは共通認識を持ち、効果的な解決策の検討に進むことができます。

本記事では、チームで真の課題を特定するための実践的な問題定義ワークショップの手順と、成功のためのポイントを解説します。

問題定義ワークショップの概要

このワークショップは、チームが抱える漠然とした「モヤモヤ」や表面的な問題を、具体的な「解決すべき真の課題」として明確にすることを目的に実施します。

問題定義ワークショップの手順

以下のステップでワークショップを進めます。各ステップでチーム全体の意見を共有し、可視化することを重視します。

ステップ1:現状共有とモヤモヤの洗い出し(15-20分)

まずは、チームメンバーそれぞれが感じている「問題」「課題」「気になること」「モヤモヤ」を自由に書き出します。

  1. 個人ワーク(5分): 付箋またはオンラインホワイトボードツールに、一人につき複数のモヤモヤや問題を具体的に書き出します。例えば、「○○機能のバグが先月より20件増えた」「定例会議で特定のメンバーしか発言しない」「プルリクエストのレビューに時間がかかりすぎる」など、具体的な事実や感じていることを記述します。付箋1枚につき1つのモヤモヤを書きましょう。
  2. 共有と貼り出し(10-15分): 参加者が順番に書き出した付箋を発表し、ホワイトボードや共有スペースに貼り出します。発表者は簡単に内容を説明し、他のメンバーは傾聴します。ここでは、内容の善し悪しや解決策の議論はせず、まずは全ての意見を出し切ることを優先します。類似するものは近くに貼っても構いませんが、まとめすぎないようにします。

ステップ2:表面的な問題の特定と整理(20-25分)

貼り出されたモヤモヤの中から、表面的な問題と思われるものを特定し、関連性に基づいて整理します。

  1. グルーピング(10-15分): 貼り出された付箋を、内容が似ているものや関連性の高いもの同士でグルーピングします。これはKJ法や親和図法の簡易版のようなイメージです。チームで対話しながら、「これは○○に関する問題群だね」「これは△△の症状かな」といった具合に進めます。グループには簡単なラベルをつけます。
  2. 表面的な問題の特定(10分): 各グループや、特に目立つ付箋群から、チームが直面している「表面的な問題」を特定します。例えば、「バグの多発」「コミュニケーション不足」「タスクの遅延」といった言葉で表現してみます。これらはまだ根本原因ではありませんが、問題の入り口として重要です。ここで、チームとして最も優先して深掘りしたい表面的な問題を1つか2つ選びます。

ステップ3:根本原因の深掘り(30-40分)

特定した表面的な問題に対して、「なぜ」を繰り返すことで、その背景にある根本原因を探ります。

  1. 「なぜなぜ分析」の実施(25-35分): ステップ2で特定した表面的な問題について、「なぜそれが起こるのか?」と問いかけ、出てきた答えに対してさらに「なぜ?」と問いかけます。これを5回程度繰り返す、あるいは根本原因と思われるものに行き着くまで続けます。例えば、「バグが多い」→「なぜ?」→「テストで見つけられていないから」→「なぜ?」→「テストケースが網羅的ではないから」→「なぜ?」→「テスト設計の時間を十分に確保できていないから」... のように掘り下げます。このプロセスも付箋やホワイトボードを使って可視化すると、原因と結果の関係性が分かりやすくなります。魚骨図(特性要因図)などのツールも有効です。
  2. 潜在的な根本原因の特定(5分): なぜなぜ分析の結果から、最も可能性が高く、チームとして影響を与えられる根本原因候補をいくつか特定します。単一の原因ではなく、複数の原因が複合的に絡み合っていることも多いです。

ステップ4:真の課題ステートメントの作成(15-20分)

特定した根本原因を踏まえ、解決すべき「真の課題」を明確な言葉で定義します。

  1. 課題ステートメントの構成要素確認(5分): 課題ステートメントは、一般的に以下の要素を含むと効果的です。
    • 誰が/何が: 誰/何がこの問題を抱えているか(例: 開発チーム)
    • 何が起きているか: 具体的な問題の事象(例: バグが多い)
    • なぜ起きているか: 特定された根本原因(例: テスト設計の時間が不足しているため)
    • 結果どうなるか: 問題が解決されない場合の影響(例: ユーザー満足度が低下し、改修コストが増加する)
  2. ステートメント作成(10分): ステップ3で深掘りした根本原因とステップ2で特定した表面的な問題、そしてその影響を組み合わせて、課題ステートメント案を作成します。「〜であるため、〜という課題があり、その結果〜という影響が出ている」のようなテンプレートを使用すると作成しやすくなります。
  3. チームでの合意形成(5分): 作成した課題ステートメント案をチーム全体で共有し、最も適切にチームの状況を表しているか、全員が納得できるかを議論し、最終的な課題ステートメントを決定します。必要に応じて複数の課題を定義しても構いませんが、まずは最も重要と思われるものに絞るのが一般的です。

ステップ5:次のステップの明確化(5-10分)

定義された真の課題に対して、今後どのように取り組むかを簡単に確認します。

  1. 課題解決に向けたアクションの検討(5分): 定義した課題を解決するために、次に何をすべきか(例: 解決策のアイデア出し、具体的な計画策定、担当者・期限の設定など)を簡単に話し合います。
  2. ワークショップの成果確認(5分): 定義した課題ステートメントを参加者全員で再確認し、ワークショップで何が決まったかを明確にします。必要であれば、次のアクションの担当者と期限を決めます。

ワークショップを成功させるためのポイント

まとめ:真の課題特定が問題解決を加速させる

チームで問題定義のプロセスを丁寧に行うことは、表面的な対応に終始することを防ぎ、根本的な問題解決への道筋を明確にします。今回ご紹介したワークショップは、チームメンバー間の認識のずれを解消し、全員が同じ方向を向いて課題解決に取り組むための強力なツールとなります。

特に、開発チームにおいては、日々様々な問題が発生します。本ワークショップを定期的に実施することで、チームの課題発見能力と問題解決能力を高めることができます。ぜひ、チームで実践し、真の課題を見つけ、より効果的な活動に繋げてください。