【実践ワーク】チームで未来のビジョンと戦略を共有・策定するワークショップ
チームが一体となり、目標達成に向けて進むためには、共通のビジョンと明確な戦略が必要です。これらが曖昧なままでは、日々の業務が場当たり的になり、チームとしての成果を最大化することが難しくなります。本記事では、チームで未来のビジョンと戦略を共有・策定するための実践的なワークショップの手順とその効果、成功させるためのポイントを解説します。
なぜチームでビジョンと戦略を共有・策定するのか
個々のメンバーが異なる方向を向いていると、チームの力は分散してしまいます。共通のビジョンを持つことは、チームの北極星となり、日々の意思決定や行動の指針となります。また、そのビジョンを実現するための具体的な戦略を共有することで、メンバーは自身の役割や貢献を理解し、主体的に行動できるようになります。
このワークショップの目的は、単にビジョンや戦略を作るだけでなく、チーム全体でそれらを理解し、腹落ちさせ、共有財産とすることにあります。これにより、チームのエンゲージメントを高め、変化への対応力や自律性を向上させることができます。
チーム向けビジョン・戦略共有ワークショップの進め方
このワークショップは、通常数時間から半日、内容によっては一日を要する場合もあります。適切な時間と場所を確保し、チーム全員が参加できる形で実施することが重要です。
ワークショップの準備
- 目的の明確化: このワークショップを通じて何を達成したいのか、具体的な目的を設定します。例えば、「次期のチームの方向性を定める」「新しいプロダクト開発の初期戦略を検討する」などです。
- 参加者の選定: 原則として、対象となるチームの全員が参加します。関連するステークホルダーがオブザーバーとして参加することも検討できます。
- 時間と場所の確保: 議論を深めるために、集中できる環境を用意します。オンラインでの実施も可能ですが、全員が積極的に発言できるようなツール(Miro, FigJamなどのオンラインホワイトボード)を用意します。
- 必要なツールの準備:
- ホワイトボードまたは模造紙
- 付箋、マーカーペン
- オンラインホワイトボードツール
- タイマー
- 必要に応じて、過去のデータや資料
ワークショップの手順
ここでは、一般的な流れと各ステップで活用できる手法をいくつかご紹介します。チームの状況や目的に応じて、内容は柔軟に調整してください。
ステップ1: 現状の共有と課題の特定(過去・現在)
- 目的: チームの現在地を正確に把握し、共通の認識を持つこと。何がうまくいっていて、何が課題であるかを洗い出します。
- 進め方:
- 過去の振り返り: 短時間で、前回の期間やプロジェクトの成功・失敗、学びを共有します。(例: Keep, Problem, Tryなど簡易的な振り返り)
- 現状分析: チームを取り巻く外部環境や内部状況について、ブレインストーミングを行います。
- 活用できる手法:
- 簡易SWOT分析: 強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の観点から現状を整理します。
- 課題の洗い出し: 現在のチームの課題や懸念事項を付箋に書き出し、共有・グルーピングします。(例: 問題定義ワークショップの一部を活用)
- 活用できる手法:
- アウトプット例: 現状の良い点・改善点リスト、グルーピングされた課題マップ。
ステップ2: 未来の理想像(ビジョン)の描画
- 目的: 形式的な言葉だけでなく、チームとして心から目指したい未来の姿を描きます。ワクワクするような、具体的でポジティブなイメージを共有します。
- 進め方:
- 未来の発想: 5年後、10年後など、少し先の未来を想定し、「その時、私たちのチームはどうなっていたいか?」「どんな成果を上げていたいか?」「世の中にどんな影響を与えていたいか?」といった問いについて自由に発想します。
- 活用できる手法:
- 未来新聞: 未来の特定の日に発行された新聞を想定し、チームの成果や活動がどのように報道されているかを記事形式で記述します。
- ヒーローインタビュー: 未来の成功したチームメンバーが、その成果についてインタビューを受けているシナリオを考え、話す内容を記述します。
- ビジョンボード: 写真やイラストなどを使って、理想の未来のイメージを視覚的に表現します。
- 活用できる手法:
- ビジョンの言語化: 出てきたアイデアやイメージをもとに、チームのビジョンステートメントやキャッチフレーズを作成します。簡潔で、記憶に残りやすい言葉を目指します。
- 未来の発想: 5年後、10年後など、少し先の未来を想定し、「その時、私たちのチームはどうなっていたいか?」「どんな成果を上げていたいか?」「世の中にどんな影響を与えていたいか?」といった問いについて自由に発想します。
- アウトプット例: 未来新聞の記事、ビジョンステートメント、ビジョンボード。
ステップ3: ビジョン達成に向けた方向性・戦略の検討
- 目的: 描いたビジョンを実現するために、どのような道筋で進むべきか、大まかな戦略の方向性を議論し、合意形成を図ります。
- 進め方:
- 戦略オプションの発想: ビジョンと現状のギャップを踏まえ、そのギャップを埋めるための様々なアプローチや戦略オプションをブレインストーミングします。
- 戦略の絞り込みと構造化: 出てきた戦略オプションをグルーピングし、最も可能性が高く、チームの強みを活かせる方向性を絞り込みます。
- 活用できる手法:
- カスタマージャーニーマッピング: 顧客視点で理想の体験を設計し、そこから必要な戦略要素を抽出します。
- ビジネスモデルキャンバスの簡易版: チームの活動を「提供価値」「顧客セグメント」「チャネル」などの要素で整理し、戦略を検討します。(プロダクト開発チーム向け)
- 重要成功要因(KSF)の特定: ビジョン達成のために、特に注力すべき重要な要素は何かを議論します。
- 活用できる手法:
- 戦略の言語化: 絞り込んだ戦略の方向性を明確な言葉で定義します。
- アウトプット例: 戦略の方向性を示すキーワード、簡易的な戦略マップ、重要成功要因リスト。
ステップ4: 具体的なアクションプランへの落とし込み
- 目的: 策定した戦略に基づき、チームが今後取り組むべき具体的な行動計画(アクションプラン)を明確にします。
- 進め方:
- 目標設定: 策定した戦略を実現するための具体的な目標を設定します。測定可能で、達成可能、関連性があり、期限が明確な目標(SMART原則など)を意識します。(例: 目標設定ワークショップの一部を活用)
- 活用できる手法:
- OKR (Objectives and Key Results): 目標(Objective)と、その達成度を測る主要な結果(Key Results)を設定します。
- KPI (Key Performance Indicators): 目標達成に向けた主要な業績評価指標を定義します。
- 活用できる手法:
- 具体的なタスク分解: 目標達成のために必要な具体的なタスクやプロジェクトを洗い出し、担当者と期限を割り振ります。
- アクションプランの整理: これらをリストやカンバン形式で整理し、チームで共有・管理できる状態にします。
- 目標設定: 策定した戦略を実現するための具体的な目標を設定します。測定可能で、達成可能、関連性があり、期限が明確な目標(SMART原則など)を意識します。(例: 目標設定ワークショップの一部を活用)
- アウトプット例: OKR/KPIリスト、アクションプランリスト、タスクカンバン。
ワークショップを成功させるためのポイント
- ファシリテーターの役割: ワークショップの進行役は、全員が意見を出しやすい雰囲気を作り、議論を脱線させずに目的達成へと導く重要な役割を担います。事前の準備と当日の柔軟な対応が求められます。
- 心理的安全性の確保: どのような意見も否定されない、安心して発言できる環境を作ることが最も重要です。特にビジョンや理想像を語る際には、自由な発想を歓迎する姿勢が必要です。
- 可視化の徹底: 議論の内容や出てきたアイデアは、必ずホワイトボードやオンラインツールに書き出し、全員が見えるようにします。これにより、共通理解が深まり、議論がスムーズに進みます。
- 時間管理: 各ステップに目安時間を設定し、タイマーを使って時間通りに進めるように意識します。ただし、重要な議論が深まっている場合は、柔軟に調整も行います。
- アウトプットの活用: ワークショップで生まれたビジョン、戦略、アクションプランは、形にして終わりではありません。定期的に振り返り、進捗を確認し、必要に応じて見直すプロセスを組み込むことが重要です。
まとめ
チームで未来のビジョンと戦略を共有・策定するワークショップは、チームの方向性を一致させ、メンバーの主体性とエンゲージメントを高めるための強力な手段です。現状分析から理想像の描画、戦略の検討、具体的なアクションプランへの落とし込みまで、体系的なステップを踏むことで、チームはより明確な目標を持ち、一体となって進むことができるようになります。
ぜひ、本記事で紹介した手順やポイントを参考に、あなたのチームでもビジョン・戦略共有ワークショップを実践し、チームの潜在能力を最大限に引き出してください。継続的な振り返りと見直しを忘れずに行い、変化に強いしなやかなチームを築いていきましょう。